♡エピローグ♡

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 「ぬうぅ」  春平が難しい顔で腕を組む。  「気持ちわりーな」  カゲは眉をしかめた。  オッサンが「愛」だの「夢中」だの言うからである。  「何でそんなこと知ってんだ」  「万能なのだ。橋倉は」  「そこまで博識そうな男に見えなかったけどな。テキトーに作っただけじゃねえか?」  「とにかく! このことはお嬢様にはご内密に……」  「うむ、そうじゃな。花言葉など知ったらヒカリがおかしくなってしまう」    おかしいのはお前たちだろうと、カゲは思った。  茶番の予感しかしない。  「泥棒、聞いておるのか?」  「心してお嬢様をお守りせよ」  カゲは面倒くさそうに欠伸をした。  「頭悪いな、てめーら。花屋とガキがどうなろうと、認めなきゃいいだけの話だろうが」  彼は胸を張り、親指を自分に向かって突き立てる。  「ガキの相手は俺様。財産を受け継ぐのはこの俺様なんだからよ!」  彼は、まだあの話を真に受けているのだ。  約十秒後、書庫内は窓ガラスが割れるかというほどの怒号に包まれた。  「この……大馬鹿者が!! ワシがそんなこと認めるワケがなかろう!!」  「料理長! 塩を持って来い!!」  カゲは、二人の勢いで入り口まで追い詰められた。  「てめーが言ったんだろうが! 財産と一緒にくれてやるってよ!」  「愚か者めが!! あれだけ真に受けるなと言っただろう!」  橋倉は、料理長に持って来させた塩をカゲの口に塗りたくる。  「穢らわしい……!」    辛い、痛い、トイレに行きたい。
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