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♡プロローグ♡
『すまない』
華奢な指を、大きな手が包み込んだ。薬指にシルバーの結婚指輪が光っている。
『私はいいの。早く奥さんのところへ行ってあげて』
女が艶やかな黒髪を揺らして微笑む。しかし、その微笑は少し悲しげでもあった。
『もっと早く君に出逢っていれば……ああ、どうして……』
『それは言わない約束。私はじゅうぶん幸せよ』
広い背中がネオンの奥に遠ざかる。
取り残された女の頬を、雨粒が叩いた──。
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