11

1/1
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ

11

宛名のない手紙を書いている。それを小瓶に詰めては、そっと水面に放り投げる。ポトンという寂しげな音が波の()や渡り鳥の歌声に消える。さよならのあとに言えなかった一言。その五文字の後悔を抱えて、僕は一人、海の向こうを見つめている。 「わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣り舟(参議篁)」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!