01:定番の……

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01:定番の……

 ウォンと高機動車のエンジン音が唸り声を上げる。私は最高にハイな気分で叫んだ。 「ひゃっはー! 汚物は消毒だー!」  目の前には大量のゾンビ。そんな動く死体共に私は車に搭載さている重機関銃をぶっ放しまくる。弾丸に肉体を抉られ、高機動車に跳ね飛ばされて肉塊になるゾンビたち。  そんな憐れなだけの彼らのどこにそんな知能があったのか。何と車の前に自らの体を積み重ね始めたのだ。 「な!」  ドレッドヘアをした運転手が、驚きの悲鳴を上げた。同時に私は叫ぶ。 「そのまま突っ込めー!」  しかしドレッドヘアはハンドルを横に切ってしまった。 「げ!」  すると車体は死体に乗り上げ横転。私は車から放り出されて地面を転がった。その際に生命力ゲージがグングンと減る。そりゃね。猛スピードで走っていた車から落ちればそうなるよな。  ゲージは緑から黄色へ。そしてすぐに赤へと変わった。その上、大量のゾンビが居る中に放り出されてしまったのだ。 「ふひひ。絶体絶命のピーンチ!」  すぐさま体を起こし、回復薬ポーションを取り出して一気飲み。空になった瓶を放り捨てて、ショットガンを取り出し四方に発砲を始める。弾丸数がみるみる内になくなっていく。リロードをしている余裕はない。ショットガンを放り投げ、ハンドガンを取り出す。パンパンパンパンとヘッドショット。しかし、それもすぐに弾が尽きてしまった。最後の手段であるククリナイフを取り出す。 「かかってこいやー!」  最後の最後まで足掻く。それが私の信条だ。近寄ってきたゾンビを一体また一体と切り捨てていく。完全に破壊は不可能だが、それでも無力化することはできるのだ。  身長が140センチそこそこしかない小柄な私だが、ステータス値のほとんどを筋力に振っているため、中々に凶悪なダメージが出る。  しかし……  その分、生命力の数値が低く一撃に弱いという欠点がある。  私は、そのままゾンビに圧殺されガジガジガジガジと噛み殺されるのだった。 『you died……』 ※ ※ ※  死に戻りをする場所は幾つかある。その中の一つに私たちは送還された。 「いやぁ。殺られちゃったねぇ」  私がそう言って笑うと運転手をしていたドレッドヘアが、その大きな体を小さくした。 「すみません。俺が指示通り突っ込んでいれば……」 「いやいや。たぶん突っ込んでも、似たような結果だったと思うよ?」 「……すんません」 「まぁいいじゃん。楽しかったんだからさ!」  そう言って私が彼の肩を叩きつつ笑いかければ、ドレッドヘアも頷いた。 「そうですね。小梅さんはこの後どうします?」  ドレッドヘアの質問に私は少し考えて答える。 「う~ん。今日はもう休もうかな」 「そうっすか。俺はもう少し頑張ります」 「うん。まだまだやりこみ要素たくさんあるから頑張りなね!」 「はい!」 「んじゃ」  そう言ってゲームをログアウトしようとした所で、耳にピロリンという新着のメールの音が鳴った。ウィンドウを開くと、新着メールが点滅している。  差出人は『邪神』とある。タイトルには『魔物図鑑を完成させよ』とある。付属のアイテムもあるようだ。 「邪神? 運営かな?」  よく分からんが、とりあえずメールを開いてみた。  瞬間。視界を大量の文字が埋め尽くした。 「な、何!」  そう悲鳴を上げた瞬間。私は文字に飲み込まれてしまったのだった。
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