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 酒場へとやってきた私たちは、さっそく注文を始めた。 「私、ハチミツ酒~」 「俺はエールを頼む」 「俺たちもエールで」  クレアスの仲間は全部で五人で、クレアスがこのパーティーのリーダをやっているのだそうだ。 「そだ。クレアスは魔獣って知ってる?」 「んあ。魔獣ってなぁあれだろ。人間にも懐く魔物の総称だろ?」 「うん。受付のメリスさんと話してたんだけど、どうもケダマがその魔獣らしいんだ」 「ほぉ?」 「うん。私が変だなって思ったのはつい最近なんだけどね」 「何かあったのか?」 「うん。ケダマって魔石を食べるんだ」 「ほぅ。魔石をなぁ。って、え! あれって食えるのか!」 「あはは、いや。無理。私も真似て、噛ってみたけど歯が立たなかった」 「噛ったのかよ!」 「当然! だってケダマに変な物を食べさせる訳にはいかないじゃん?」 「はは。剛毅だな。魔物の体内に生成される石だぞ? 普通は噛じろうって気にはならんぞ」 「そう?」  私とクレアスが話していると、そこにゲンゼンが割って入ってきた。 「よぅ。魔獣がどうしたって?」  ゲンゼン・イシバル。グレーの髪に整えられた口髭が特徴のオッサンだ。ちなみに30歳で、クレアスのパーティの中では最年長となっている。ちなみにクレアスのことを若と呼でいる。 「そういやゲンゼンは魔獣マニアだったな」  クレアスがゲンゼンに話を振る。 「おうさ。若。俺は冒険者を引退したら魔獣屋をやるんだ!」  そう言って目を輝かせるゲンゼン。私はゲンゼンに尋ねる。 「ゲンゼンから見て、ケダマは魔獣に見える?」 「おう。まぁ魔獣って言ってもその実、よく分かっていないんだがな」  そう言ってゲンゼンは魔獣と魔物と獣の違いを話してくれた。 「魔物ってのは体内に魔石と呼ばれる石を生成する人間を襲う生物のことだな。その中で人に良く懐く種も居る。それを魔獣と呼んでいるだけなんだ。本来魔物は人間には懐かん。獣はまぁ魔石を持たない生物だわな。ケダマが魔石を口にしたということは、それは魔物であるという証明だな。懐いたから魔獣とも呼べるのだが…… しかしこんな魔獣いたかな?」  そう言ってゲンゼンが考え込んでしまった。私が改めて尋ねる。 「ゲンゼンもケダマの種族は知らない?」 「知らんな。見た目が、ほとんどただの犬だからなぁ。しかし魔石を口にする以上は魔物だ。となるとオオカミ系の魔物ということなのだろうが…… 白色ねぇ?」 「やっぱ珍しい?」 「あぁ。自然界では時々白色の獣が生まれることはあるが、それの魔物版と言うことなのかもしれんなぁ」 「へぇ」  私はそう言って、足元に居たケダマを抱き上げる。 「お前、アルビノなの?」 「わふ!」  私はケダマを足元に戻すとゲンゼンがケダマに骨付き肉を与えた。その目元はとても優しい。 「そういやコウメちゃん?」  今度、話しかけてきたのはハインス・ベレイ。クレアスのパーティの中では一番若い赤毛の男だ。ちなみに二十一歳。結構なイケメンだ。 「ん? 何、ハインス?」 「あのさ、あのナイフ。俺にも譲ってくんね?」 「どしたの? 突然?」 「クレアスの兄貴に見せてもらったんだけど、あれ! 結構な業物だよ。一本欲しいんだ! もちろん買い取るよ!」  私は少し考えて「いいよ」と頷いた。そしてウィンドウを開き、ショップでククリナイフを購入。それをハインスに渡した。 「ありがとう! やったよ。これ! 何でも市場だと結構な値で売られているらしいね!」 「そうらしいね。転売しないでよぉ」 「うん。分かってるよ。そだ。そう言えばギルドで聞いたんだけどコウメちゃんって、最近は変わった武器を使っているんだってね?」 「ん? あぁ。銃のことだね」 「銃?」 「うん。最近は散弾銃を持って歩いているよ」 「散弾銃?」 「えっと、どう言ったらいいか……」  そう言って少し迷う小梅。説明が難しいのだ。 「だいたい五〇メートル以下の距離で戦う飛び道具だね」 「弓とは違うの?」 「うぅん。どっちかというとクロスボウのほうが近いかな。ただしクロスボウより連射が可能だけどね」 「おぉう。それは強力だね」 「うん。ナイフとハンドガンじゃ流石に厳しいからね」  そう言って笑顔で答えたのだった。
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