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 それからも森を歩いていると、かなりの頻度でゴブリンに遭遇した。  ギャッギャ。ギィギィと喧しい。  私は段々とパーティ戦での立ち位置を憶えていった。  後方支援が主な活動内容だ。  クレアスやセーラ。ゲンゼンが囲まれないように敵の端の方を削るのが役目。  仲間を後ろから間違えて撃ってしまうのが怖いので射線にはなるべく被らないようにする。 「その点、弓は良いよね?」 「どうしたの? 突然?」  隣りにいるハインスに振り向く。 「だって曲射っていうの? 仲間の更に前方。敵からすると奥の陣地へと攻撃を仕掛けることが出来るんだもん。銃だと曲射はちょっと無理。どうしても射線をとらなきゃいけない」 「あぁなるほど。誤射ね。それは確かに怖いよね」  そう言って笑うハインス。彼は続けて言う。 「まぁそこは前線の仲間を信じて、自分たちは自分たちの役割に徹することが大事だね」 「回り込もうとする敵を削る?」 「そう」 「まぁ、やっぱ、そうなるか……」  しかしそれが一番安全で確実なのだ。  私達は、その後も進む。徐々にゴブリンと出くわす頻度が増えてきた。そこに見知らぬパーティと合流した。クレアスがボソリと呟く。 「『餓狼』だ」 「確か王都出身だっけ?」 「そうだ。話し合いはオレがする」  そう言ってクレアスが前に進み出た。そこで私は見てしまった。見つけてしまった。罠男を。私に罠を仕掛けて殺そうとした男だ。 「あ、お前! 罠男!」  全員が私を見る。すると罠男も驚いた表情を見せた。そんな男に私が突っかかろうとすると、しかしそれをセーラが止めた。 「どうしたの? コウメちゃん?」 「こいつ。私を罠に嵌めたんだよ!」  これに罠男が鼻で笑う。 「はっ! オレがやったっていう証拠でも有るのか?」 「ぐぬぬ。証拠は…… ない! でも証言は有る! アンタが罠の材料を買っていたっていう情報は上がってんだ!」 「ふん! それがどうした? オレは別にお前を狩ろうと思って仕掛けたんじゃない。たまたまオレが仕掛けた罠にお前が落ちたんだ。間抜けなお前がな?」 「ぐっ!」  私がそれ以上、何も言えずに黙ってしまう。そこにクレアスが前に進み出た。 「あぁ。すまんな。ウチのが厄介になったみたいだな?」 「あんだてめぇは?」 「クレアスという。とりあえず宜しくな」  そう言ってニコニコ笑うクレアス。しかしその目が笑っていない。そこに『餓狼』のパーティリーダーが前に進み出てきた。 「あぁ、ウチのが悪ぃな。そんで? お前さん達は、そんなガキを連れてピクニックにでも来てんのか? あぁん?」  そう言ってケタケタ笑う。クレアスは、どうということもなさそうに話す。 「まぁそうだ。ゴブリン程度ならピクニック気分でも狩れるからな。そういうお前たちはゴブリン程度に全力か? さすが王都出身だな?」  これに餓狼のパーティメンバーの一人がいきり立とうとした。それをリーダーが制す。 「あぁ落ち着け。まぁ何だ。ゴブリンキングは早いもの勝ちだ。俺達が狩る。お前たちは後ろで指でも咥えて見ていればいい。田舎の腰抜けどもにはそれがお似合いだ」  そう言って餓狼の人たちは歩き出し始めた。クレアスも歩き出す。ただし方向が少し違う。 「俺達はこっちから行くぞ」  そう言って歩き出したのだった。
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