(9)おまけ*

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 小さく喉を鳴らしてそのすべてを飲み下したレオンハルトは、力なく投げ出された弟の下肢から顔を上げると、ようやく己の着衣に手を伸ばした。きっちりと閉ざされていた上衣の釦を外し、肩から落とす。  一枚、一枚とゆっくりと衣服を脱ぎ、その鍛えられた美しい裸体を惜しげもなく晒す兄を目にし、焦らされた末の絶頂でぐったりと身を投げ出していたリュセルの瞳に再び情欲が宿る。  再び兆し始めたリュセル自身に気づいたレオンハルトは、その美貌に妖艶な笑みを浮かべた。 「いい子だ」  そのままリュセルの膝を再び割ると、後腔の入口をなぞる。 「んぅっ」  過ぎた悦楽に既に熱をもち蕩けていたそこを更に熟れさせる為、レオンハルトはサイドテーブルの上に置きっぱなしにしていた例の香油をすべて掌の上に落とし、指に絡ませて内に塗り込んだ。 「く、ぅぅううううっ」  せり上がってくる熱いうねりに翻弄されて、リュセルは啼きながら脚を開いて身悶えるしかない。レオンハルトの熱い舌が胸の突起の上を弄び、長い指が体内を嬲るその感覚。 「ぁあああっ、いぃ……あ、あ、あ、ぁあ、もっとっ」  リュセルは腰をくねらせて、二本に増やされた指を更に体内に招き入れようと激しく腰を揺らした。欲張るように根本まで兄の長い指を頬張った後腔は、甘くきつく締め付ける。  だが、レオンハルトの指での愛撫と、もたらされる媚薬の影響で貪欲に刺激を求め収縮するそこは、指などでは満足しないだろう。 「這いなさい」  リュセルが我慢出来ずに欲しがるよりも早く、その痴態に煽られたのか、レオンハルトはいくらか掠れた低い声でそう命じた。  ジャラ……  自分の体内から抜け出る兄の指を惜しむように絡みつく内壁の動きを制御する事も出来ないまま、リュセルは荒く甘い息を吐き、やっとの思いで腕を突っ張って上体を起こす。その動きにつられて、手枷と足枷に繋がれた銀の鎖がわずかな音をたてた。食むものを失くした後腔がヒクヒクと物欲しげに轟く。  そして、無言のまま自分の動きを見守るレオンハルトの目の前で、リュセルは命じられるがまま、獣のように四つん這いに這う。 「ふふ、まるで捕らわれた銀色の獣のようだね」  銀の手枷、足枷を嵌められ、鎖に繋がれた銀色の狼。決して人に慣れぬであろう、孤高の生き物を連想させるその体を震わせて、リュセルは懇願した。 「兄さ……お願…………っひ、ィィィイッ!」  懇願の言葉が終わらぬ内に押し入ってきたものの指とは比べようもない質量感に、リュセルは悲鳴を上げる。  挿入れると同時に達しかけたリュセルのものにレオンハルトの指が再び伸び、それを即座に阻んだ。 「いやっ、やだッ……やああああ!」  シーツを両手で掴み、上体を伏せて腰を突きだした状態のまま、リュセルは後ろから覆いかぶさる兄の無体さに泣いた。 「今夜は少し我慢してから達くんだよ」  わずかに息の乱れたレオンハルトの声を耳元で聞いて、ふるふると震えながらも頷き、動きだした凶悪な兄のものの容赦のない突き上げ。リュセルは大きく目を見開いて啼き声を響かせる。 「ん、あぁぁ、あっ、んッ……はあっ」  余す事なく広げられ、揺すられ、擦られ、その上、自分が狂乱する快楽の的を思う様突き上げられる、その感覚。達けそうで達けない甘い責苦に、リュセルの感じやすい体は、はしたない位に悦び、乱れた。  その体位が、自分が最も苦手とするものだという事もいつしか忘れていた。獣のように犯され、一番奥まで感じるそれが、感じやすいが故に嫌いだったのに……。  ただただ、後腔を犯されるのが悦くて、夢中になってレオンハルトの動きに合わせて腰を振る。 「はんっ……は、ぁあっ、いぃッ、ぁぁあああッ」  そんなリュセルの悲鳴じみた嬌声と、わずかに乱れたレオンハルトの息使い、そして繋がった下肢から響く卑猥な水音、二人の動きによって軋む寝台。室内を満たす音の淫蕩さは、その空気をも熱っぽく淫らなものに変えていた。  ビクビクと震えるそれの限界を、戒めていた指先で感じていたレオンハルトは、徐々にその戒めを緩めていく。 「くっ、ぁあああああああっ」  ズンッと一際深く勢いをつけてリュセルの中を暴いた大きなそれを締めつけながら、絶頂を迎える。  焦らされた果てに迎えた絶頂に目の奥が赤く染まり、頭の芯に電流が走るような強烈さを感じ、リュセルの意識は飛び、腰が砕け落ちた。 「……っ」  砕け落ちる前にその腰の両側を掴み引き上げたレオンハルトは、小さく息を洩らしながら、強くリュセルの腰を引き寄せて、そこにすべてを注ぎ込む。  ぼんやりと薄く目を開いたまま、シーツの上に倒れたリュセルは、内部を満たすものの熱さを感じながらも小さく体を震わせる事しか出来ずにいた。  そんなリュセルの背に口づけを落としていたレオンハルトは、体をずらし、その中から抜け出ると、今だ正気に返らない弟の体を仰向けにして、薄く開かれた唇に優しく口づける。  唇に、頬に、瞼に滑る柔らかな唇の優しい感触。それを感じる内に、達した時の衝撃で半ば失っていた意識がようやく戻ってくる。 「ぁ……レオン」
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