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「我が社の情報をライバル会社に流しているのは計倉さんですね?」
「え……」
突然の麗華の発言にみなが固まった。名指しされた計倉は天国から地獄へ突き落とされ顔面蒼白だ。
「そんな事……私は……」
「我が社の乗っ取り計画があるようです。それを社内で手引きしている社員がいる。そこで私は調べました。先ずは売野さん」
「え、僕? まさか!」
売野は首を激しく横に振った。
「売野さんは他社との付き合いも広いので真っ先に容疑者として名前が上がりました。でも売野さんは私の笑顔を守るとおっしゃってくださいました」
麗華は売野に微笑みかけた。
「そして京極さん。政治家はとにかく当選しなければならない。そのためにはかなり際どい手も使うようですね。その票集めのために乗っ取りに協力するという事も考えられる」
「僕は選挙とは関係ないです!」
京極は大きく手を左右に振った。
「全くです。今お父様は選挙戦の真っ最中。なのにあなたは呑気にお花見に来ている」
「だって、僕には僕の人生があるから。夜の料亭よりも昼間の花見の方が楽しいじゃないですか」
「ええ。見ていて分かりました。京極さんが一番楽しそうでした」
麗華に微笑みかけられ、京極は子どものように照れて笑った。
「そして戸増さん。あなたにはたくさんの引き抜きの話が来ていますね。あなた専用の研究室を用意するとか、給料を倍出すとか」
「はあ」
「今日のあなたを見ていて、とてもそんな野心は見られませんでした。なんならそんな誘いさえも煩わしい、研究の邪魔だと思っていそうです」
「その通りです。僕は今の状況に満足です。静かに研究だけしていたいです」
野心の欠片もない男だと麗華からお墨付きをもらってしまった。何とも情けない。
「それに比べて計倉さん。あなたの野心はあからさまです。上に行くためなら会社も私も踏み台にしようとしましたね」
「何の事ですか」
計倉はあくまでも冷静を装っていた。
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