前編

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 何かにつけて優秀なユランが、邪魔になったのだろう。  幼いユランは子供のいなかったクルーガ伯爵家の養子となり、後継者として育てられた。そして私の姉であるゼルマ・ヘンゼルと婚約した。二人が婚約した当時、ユランと姉はまだ十二歳、私が十歳だったと記憶している。  状況が一変したのは、ユランが十八歳になった頃のこと。  ユランを養子に迎えたクルーガ伯爵家に、夫妻の実子である弟が生まれたのがきっかけだった。  ユランを後継者にするはずだったのに、いざ実子が生まれるとクルーガ伯爵夫妻は実の息子の方を自分たちの後継者にしたいと思い始めた。  ユランが伯爵位を継げないのではないかと感じ取った姉のゼルマは彼を見限り、もうすぐ結婚だと言う時期になって、婚約破棄したいとしきりにごねるようになった。  そんな時、ユランの兄アンゼルムにも異変が起こった。  放蕩の限りを尽くしてジークリッド家の財産を使い切ったアンゼルムは、長年の自堕落な生活のせいで、体を壊して亡くなったのだ。  ユランは伯爵家との養子縁組を解消し、兄が治めていたこの領地に戻った。姉のゼルマはユランと結婚して同行し、辺境伯夫人としてユランを支えていく……はずだった。  しかし姉は、やはり最後までユランとの結婚を拒んだ。 『私が婚約したのはクルーガ伯爵家の嫡男のユランよ。ユランとクルーガ伯爵家の養子縁組が解消されるなら、私たちの婚約も解消すべきよね?』  そんな言葉を残し、家族が止めるのも聞かず、さっさと外国に留学してしまったのだ。
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