前編

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 真実を教えてくれるという、魔法の鏡。  いつも無表情で何を考えているのか分からないユランが、そんな道具に頼るだなんて。 (いいわ。酷いことを言われた腹いせに、ちょっと揶揄ってやろっと)  私は鼻をつまんで下を向き、わざとしわがれた声を作って壁に向かって言った。 「ユラン・ジークリッド。私は魔法の鏡。貴方の問いに答えましょう」  壁の向こうでユランが驚いて立ち上がったのか、椅子が倒れたような音がする。 「……鏡よ、ありがとうございます。ようやく私の声が通じましたか。私に真実を教えていただきたいのです」  ちょっと、騙されたわよこの人。嘘みたい。 「ユラン・ジークリッドよ。貴方は大っ嫌いな人と結婚させられたらどうなるか、を私に聞きたいのですね?」 「大嫌いとまでは……、くらいでお願いしたいのだが」  あら、そう。  私のことは『大っ嫌い』ではなく、『好きではない』程度なのだそうだ。まあ、そもそも私に興味を持ったことすらないのだから、大っ嫌いと言われる筋合いもない。
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