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真実を教えてくれるという、魔法の鏡。
いつも無表情で何を考えているのか分からないユランが、そんな道具に頼るだなんて。
(いいわ。酷いことを言われた腹いせに、ちょっと揶揄ってやろっと)
私は鼻をつまんで下を向き、わざとしわがれた声を作って壁に向かって言った。
「ユラン・ジークリッド。私は魔法の鏡。貴方の問いに答えましょう」
壁の向こうでユランが驚いて立ち上がったのか、椅子が倒れたような音がする。
「……鏡よ、ありがとうございます。ようやく私の声が通じましたか。私に真実を教えていただきたいのです」
ちょっと、騙されたわよこの人。嘘みたい。
「ユラン・ジークリッドよ。貴方は大っ嫌いな人と結婚させられたらどうなるか、を私に聞きたいのですね?」
「大嫌いとまでは……好きではない、くらいでお願いしたいのだが」
あら、そう。
私のことは『大っ嫌い』ではなく、『好きではない』程度なのだそうだ。まあ、そもそも私に興味を持ったことすらないのだから、大っ嫌いと言われる筋合いもない。
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