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「悪く思うな。今の海賊の掟は『敵前逃亡』と『女子供の船への連れ込み』以外で死刑になるこたァねぇ。ちぃーとばかし痛い目に遭った上で無人島への追放ぐらいで許されるはずだ。その方が海賊やってるより安全だしな」
「ウーテウス…… 船長? アンタ一体何を?」
「すまねぇな。俺はまだウーテウスでいなきゃいけないんだよ。大海賊を殺した汚名と名誉はお前に被ってもらう」
信号砲の光を見た夜警の海賊が桟橋に集まってきた。彼らはジョージ船長の死体を確認し、その死を悲しんだ。
そして、尋ねる。
「ウーテウス船長! これは一体誰が!」
ウーテウス船長は信号砲をエーギルに向けた。
「こいつだ。ウチの戦闘員が俺を首席海賊に引き上げるんだって先走りやがった。俺はやめろと言ったんだけどな」
夜警の海賊はエーギルを羽交い締めにし、拘束する。エーギルに抵抗されないように素早く体を検め、舶刀とフリントロック銃を引き剥がし、そのまま海にポイと捨てた。
「ウーテウス船長…… どうして!」
ウーテウス船長はエーギルのブーツに唾を吐き捨てた。そして、耳元で低い声で囁きかける。
「海賊殺しの言うことは聞きたくねぇなぁ? 後は自由海賊団の奴らに可愛がってもらった上で、裁判受けるんだな」
「なんで! なんでだ! ウーテウス! ウーテウス船長!?」
ウーテウス船長はエーギルを一瞥もせずにくるりと踵を返し、その場から去ろうとしていた。
この世界で親を知らずに育ったエーギルにとってウーテウス船長は実父も同然。船長をこのレィンディアー海一の大海賊にしようと尽力してきたと言うのに…… 最後の扱いはゴミでもポイと捨てるかのように裏切られた。前世の実父と同じじゃないか! 絶対に許してなるものか! 去り行くウーテウス船長の背中に向かってエーギルは叫んだ。
「よくも裏切ったな! いつか殺しに行くぞ! 覚えていろ!」
「いつかっていつだ? 永遠に先延ばしにして、穏やかに生きるんだな?」と、ウーテウス船長は満面の笑みを浮かべながら述べた。
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