第二章 置き去り生活

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第二章 置き去り生活

 エーギルはルドン島にて生と死の紙一重の生活を送っていた。 主食は海岸に打ち上がった海鼠。それを短剣(ガリ)で三枚におろし、干物にするために切り分ける。砂浜にカニが歩いていればそのまま生で殻ごとボリボリと。主食が海鼠故にカニは「ごちそう」の扱いであった。海への素潜りで魚を採って食べたのだが、この辺りの魚は鈍色に輝き食中毒を引き起こしやすいのか、腹痛を引き起こすために避けるようになっていた。  この入り江の反対側には岩壁が出来ており、乗り越えることは出来ない。 ただ、その向こうにはジャングルがあり、時折であるが、ジャングルの鳥が入り江へと下りてくる。食べようかとも考えたが、鳥肉を生で食べて死んだと言う話をサトウキビ農場時代に聞いたことがあり手を出すことはなかった。 毎日、海鼠とカニを食べる生活を三十日(日数は「正」を書く画線法で確認)過ごしたところでエーギルに転機が訪れた。なんと、入り江にブラックジャガーが現れたのである。 もしかして、ジャングルに通じる道があるのだろうか。エーギルは希望を持った。 エーギルは入り江にて野ざらしとなった「先輩」の骸骨の胸に刺さった錆びた舶刀(カットラス)で勇猛果敢にブラックジャガーと戦い、勝利を得た。 いくら常夏のレィンディアー海とは言え、夜は寒い。エーギルは船医のミッキーがワニを剥製にしている作業を見たことがあるために、生き物の皮の剥ぎ方は理解している。ブラックジャガーを解体し、就寝の際の毛布に仕立て上げるのであった。 エーギルはブラックジャガーが入ってきたと思われるジャングルへと続く岩と岩に挟まれた小道を探すことにした。見つけたのは小道ではなく小さなトンネルも同然の洞窟であった。
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