第二章 置き去り生活

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「フナムシより身があるからマシってところか。次食べる時は羽根剥がした方がいいな。カニの殻に比べて不味い」 エーギルはこの島に来てから口に入れられるものは何でも口に入れてきた。 昆虫などは「試してみるか」と気軽に口に入れてしまう。昆虫は生で口に入れても腹痛を引き起こさないことから比較的「好き」の部類に入っている。 フナムシは殻が砂のようにガリッとする上に身も少ないために「不味い」の部類に入っているが、苦みが独特であるために見つければ食べるぐらいには好ましいものであった。 食べない昆虫は「蝿」と「蛆」。理由は死体に集っているところを何回も見ており「思い出す」からである。  それから一刻ほど歩いたところで、ジャングルを抜けた。 そこにあったのはもう一つの入り江。入り江とは言うが、岩礁地帯であるために「置き去り」の際の放置場所に使うことは出来ない前人未踏の地であった。人が入った形跡がないために海岸にはイグアナが群れを作り砂浜を緑の平原に変えていた。 イグアナはナンシィーのレストランでもスープとして出されている程の食材、白身魚と似たような味のためにエーギルは好んで飲んでいる時期があった。 「ご馳走だ!」 エーギルは舶刀(カットラス)を振りかぶってイグアナの群れに向かって全力で駆けていった。イグアナは危機を感じ、一斉に海へと飛び込みにかかる。 砂浜が緑に染まるぐらいにいたイグアナ全てが逃げるとはなんて統制の取れた奴らだ……エーギルは指を鳴らして悔しがった。  しかし、イグアナをスープにして煮立てるための火がないことには狩りをしても仕方ない。悔しさは少なかった。 さて、入り江(我が家)に戻るかと踵を返した瞬間、エーギルは海岸に打ち上がったものに気がついた。
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