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「こちらがサプライズプレゼントでーす」
そう言った奏詞の手にあるものは、四人分のサインの書かれているCDではないか。これがもらえるの? 凄すぎじゃない、珠の座敷童子パワー。
そして、奏詞の手から私の手、ではなく隣のコクアさんの手に渡された。
「今日は来てくれてありがとう」
えっ、私じゃなくてコクアさんが百人目だったのか。惜しい、あと一人だったのに。でも、これまでの人生でここまで惜しかったこともなかったから、やはり座敷童子パワーで運気は上昇傾向なんだな。
「ほふぅ〜、これが奏詞の直筆サイン。コクアさん、写メ撮らせてください、写メ」
駅に向かう途中のカフェに二人で入り、向かい合ってカフェラテを飲んでいる。コクアさんがもらった特別なサイン入りCDにスマホのカメラを向けた。
「ああ、照明が反射してうまく撮れない」
「あら、ならあたしが持っていてあげようか」
コクアさんがCDを持ち、胸の前に掲げると照明の反射が抑えられて綺麗にサインが写る。
「せっかくだから、コクアさんの写メも」
今度はコクアさんの顔が入るように撮影ボタンを押す。コクアさんは、CDではなく団扇で顔を隠そうとしていた。
「ちょっとぉ、あたしの肖像権」
「え、やっぱりコクアさんは芸能人?」
「いや、まあ芸能、うん芸能関係なのかな」
「そうだよね、コクアさんみたいな超絶美人が一般人とは思えないもん」
「ウフフ、ありがと。一つあげるね」
コクアさんはお皿に乗ったマカロンを私に勧めてきた。このマカロンも私が買ったあとに、コクアさんがレジで購入を告げると、二個セットでの販売だけれど残り三個になっているので一つサービスです、と店員さんがくれたものだ。
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