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「もーう、出ないんならお湯を抜いちゃおうかな」
「なにすんのよ、このエロイケメン」
言葉と同時に私は右手でイケメンにビンタを喰らわせた。
はずだった。
私のビンタは、イケメンの顔を通り抜けて空振りに終わったのだ。
「「えぇ——————」」
なぜか聞こえる二人分の悲鳴。
「なんで、すり抜けるのよ。あんた、なんなのよ」
「なんでいきなりビンタすんのさ。凶暴すぎない」
と、お互いに驚いたらしい。叩かれてもいない頬をさすりながら、涙目になっている超絶イケメン。改めて、誰なんだ。そしてなんなんだ。
ササッ
一瞬、私の視界の端に再び捉えられる恐怖のG。そして本日何度目かわからない私の悲鳴が浴室に響き渡る。
「ああ、なんだ"ごきかぶり"ではないか。
沙耶はこんなものが怖いのか」
そう言って、超絶イケメンはGいや、ごきかぶり? に向かって掌を向けた。一瞬、あたりが眩く光ると、そこにはごきか、いやGの姿はもうなかった。
「えっと、消滅させたの?」
「まさか。神様である俺が殺生なんてするわけがないだろう」
「ふーん」
んっ? 今、コイツ何気に神様とか言わなかったか。かわいそうに頭のネジが少し歪んでいたり、外れているんだろう。いやでも、そもそもコイツはどこからきた? あの一瞬でGをどうした?
「本当に神様?」
「だから神様なんだって。それより早く怪我の有無の確認を」
「出ていけ、このセクハラエロ神」
私の怒りは怒髪天を衝くどころか、天を貫く勢いだったのだろう、超絶イケメンのセクハラエロ神を「ひぃっ」という悲鳴とともにその姿を消したのだった。
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