4 吉兆ここに極まれり

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 座敷童子パワーに匹敵する超絶美人パワー、侮れないな。でも、これだけ美人だといろんな恩恵がおるんだろうな、などと少しうらやましくなった。 「えっ、コクアさん今日のホテル予約してないの?」  聞けばコクアさんは関東住まいではなく、今日はサプライズライブのために東京に来たらしい。しかしこれからホテルを予約するのはかなり困難だと思われる。なにせ今日は、三連休の真ん中。どのホテルも満員だと思う。 「あの、良ければうちに泊まります? 千葉なんでここから電車で移動になるんですけれど」  今日会ったばかりの他人を自宅に泊める、ちょっとだけ不安はあるものの珠もいるし、大もいる。万が一危険なことがあっても問題ないだろう。 「本当に? 嬉しい、とっても助かるわ」  コクアさんは、笑顔を見せ、私の提案に同意してくれた。  電車に乗り込むと座席は全て埋まっていて、私たちは吊り革に掴まり立ったまま出発を待っていた。ライブではしゃいだ身体は疲れており、グッズが大量に詰め込まれたバッグを持ってこのまま立っているのはしんどい。すると、コクアさんの目の前の乗客が何かを思い出したように立ち上がり、そのまま電車を降りていった。コクアさんと目があったので、どうぞと目で訴えてみた。コクアさんはニッコリと笑い、座席に腰を下ろした。 「沙耶ちゃん、荷物預かるよ」  と言って私の荷物を膝の上に載せてくれた。荷物を持つことがしんどかった今、すごくありがたかった。ああ、これもきっと珠の座敷童子パワーなんだ。目を閉じればMoon Catのかっこいい演奏姿、目を開ければコクアさんの超絶美人の笑顔。幸せすぎだな。
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