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そりゃあ、セクハラエロ神である大がニヤつくのも理解できる。慌てて立ち止まり、たくしあげられているスカートを下ろした。
「ちょっと大。なんてことするのよ」
「だから、なんかしてんのは、アイツなんだって」
「アイツ?」
大が指差す方に目線を向けると、そこには団扇を扇ぎながら、佇むコクアさんの姿があった。
「いやいやいや、大、あの超絶美人な方はコクアさんって言ってね」
「貧乏神だ」
「へっ?」
「だからあいつは貧乏神なんだって」
貧乏神って、あの取り憑いた人をアンラッキーに導いていくアレか。コクアさんが貧乏神?
「んなわけないでしょ。貧乏神って服も汚らしくって、見た目もザ貧乏神って感じじゃない。コクアさんのどこが、ザ貧乏神なのよ」
「貧乏神は元々、女性なんだよ。なんで、そんな綺麗な服を着ているかはわからないけれど、とにかくそいつは貧乏神に間違いない」
衝撃の真実。いや、コクアさんが貧乏神ということじゃなくて、貧乏神がもともと女性だったとは。ねずみ男みたいな感じや、痩せ細った髪の薄いおじいちゃんのイメージしか出てこない。
「でも、コクアさん、良い人なのよ。私に不幸や不吉なんてもたらしていないよ。今日だってとっても楽しかったんだから」
「楽しかったのはいい。でも何かなかったか、失敗したことや、残念だったこと」
失敗や残念?
「手鏡割れた」
「そいつのせい」
「一番違いでプレゼント貰い損ねた」
「本当は沙耶がもらえるはずだった」
「マカロンは?」
「本当は沙耶が二個もらうはずだった」
「電車の席は?」
「沙野が座れるはずだった」
「ペアチケットも?」
「沙耶がもらえたはず」
「このスカート破けたのも」
「うん、それは貧乏神グッジョブだな」
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