4 吉兆ここに極まれり

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「させるか、アホぅ」 「ふぉっ」  今まさに両手を広げて、唇を突き出したクリスマスツリー女、いや福の神である吉祥天が大に足を引っかけられた見事に転んでいる。 「なにをする!」 「なにをするじゃねえ。沙耶のオッパイは僕だけのものだ」  それも違うぞ、セクハラエロ神よ。 「でも本当にさっきはうれしかったわ、沙耶ちゃん」  私の肩に手をかけながらコクアさんが笑顔を向けてきた。うん、マジ綺麗。この至近距離で見つめられたら、本当にキュン死するかも。 「昔から、私の正体が貧乏神とわかった途端に、掌を返したように態度を変える人たちをたくさん見てきた。だから、沙耶ちゃんの言葉、本当に心に響いたわ」 「だって、私、今でもコクアさんのこと好きだし、友だちって思ってるもん」 「グレイトよ〜、エクセレントよ〜、アメイジングよ〜。もう吉祥天の能力全部を使って沙耶ちゃんに福を集めちゃうわ〜」  いつのまにかに立ち上がり、コクアさんとは反対の肩に顎をのせながら(なぜ顎?)吉祥天が話しかけてくる。 「吉祥がそんなことをしなくても、沙耶ちゃんはもう十分すぎる加護があるわよ」  そう言ってコクアさんは、大と珠に目線を向けた。まあ、確かに大はともかく珠の座敷童子パワーはすごい。ここに福の神である吉祥天パワーまで乗っかったらラッキーがインフレーションを起こしておかしくなりそうだ。反動でなにか恐ろしいことに巻き込まれるとか。 「あ、あの吉祥天さん。コクアさんの言うように私もう十分幸せなので、これ以上は、あの」
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