4 吉兆ここに極まれり

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 失礼のないように断ろうと、しどろもどろになっている私の目の前にコクアさんが何かを差し出してきた。 「だからせめてこれは沙耶ちゃんに差し上げるわ。私との友情の証とした、もらってくれないかな」  そう言ったコクアさんが持っていたのは、Moon Catのメンバー全員のサインが入ったCDだった。 「コクアさん、これって」 「もともと沙耶ちゃんがもらえるはずだったものだから。遠慮なくもらって」 「あ、ありがとう、コクアさん」  私がCDを受け取ると、妹もきたし今日は帰るね、そう言ってコクアさんは消えていった。クリスマツいや福の神吉祥天とともに……。  コーヒーを飲みながら、コクアさんに譲ってもらったCDを聴いていると、目の前の席に大が姿を現した。 「この曲のどこがいいんだ?」  机の上のCDケースを見ながら訊いてきた。 「見た目や立場じゃなく、その人の本質を見ることが、人と向き合うってことなんじゃないかっていうところこな」 「ああ、まさに吉祥天と黒闇天の伝説のようだな」 「二人の伝説?」  確かに福の神と貧乏神の昔話は聞いたような気がするけれど、どんな話だったっけ? 「それってどんなお話?」 「すごーく端折って言うと、福の神である吉祥天はどこでも歓迎されたけれど、貧乏神である黒闇天は敬遠された。でも、吉祥天は黒闇天とセットじゃないと福を授けてはくれない、みたいなもんだよ」  伝説や伝承のなかでも仲の良い姉妹なんだな。それにしてもあんなに綺麗なコクアさんが貧乏神なんて信じられない。そう思って、スマホで検索をしてみる。 「あっ、あ〜。確かに持っていたわ」   スマホの画面には、コクアさんが持っていたような大きな団扇をもった黒闇天の姿が映されていた。
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