5 お茶汲み姫の憂鬱

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 という事で、なんの因果かわからないけれど私はこの家で屋敷神と座敷童子とで暮らし中である。神様が居着く我が家はそれなりに古く、一般的に推奨の二十八度設定にしてしまうと、時代遅れのエアコンでは全く効果がない。今も十八度に設定されているにも関わらず、三十七度にも上る外気温にコールド負け状態である。 「クソーっ、こんな暑い夏なんて大嫌いだー。一年中、春と秋でいいのに」  思わず暑さに対する怒りのあまり絶叫してしまった。これだけ大きな声で叫べば、夏の神様も私の苦境に気がついて、早く秋にしてくれるかもしれない。マジ、夏なんていらない。 「大嫌いだー」  外から声が聞こえたような気がする。ん、なんだ、さっきのコダマが返ってきたのか。いや、そんなはずはない。こんな猛暑の炎天下に外に出ている人がいるのか。しかも、女性の声のように聞こえたぞ。万が一、家の前で行き倒れられでもしたら非常に心苦しいし、はた迷惑な話だ。意を決して、暑さを覚悟で門の外の様子を見に行った。 「えっ」  そこには、我が家の門から続く屛に人がもたれかかっているではないか。淡い水色の浴衣を着たショートカットのかなりかわいい女の子が、この猛暑の炎天下の日差し浴びまくりの場所にいるのだ。どこぞの祭りか花火に行く途中に行き倒れたのだろうか。 「ちょっと、大丈夫? こんなところにいたら、熱中症で死んじゃいますよ。私、森沙耶(もりさや)っていいます。私の家、ここなのでとりあえず中に入りましょう」  女の子はうっすらと目を開けると、よろよろと立ち上がった。一瞬、大を呼ぼうかと思ったが、よく考えれば我が家のポンコツ屋敷神は人間に直接触れないんだった。クソッ、このフラフラしている女の子をかよわい私一人で家の中で支えて歩かないといけないのか。私より遙かに華奢な体とは言え、大汗をかくことを覚悟するしかないな。と思ったが、意外にも足取りはしっかりしており、自分で歩いて屋敷の中に入れた。
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