5 お茶汲み姫の憂鬱

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「こ、これは」 「お前がいなくなって、炎帝が暑さを抑えきれなくなってるんだろうな」 「私が逃げてきたために……」 「お前の責任だけではないけれど、今のこの状況を何とかできるのは筒姫、お前しかいないのは間違いないぞ」  話が全くわからん、そもそも炎帝って誰だ。この猛暑は筒姫が原因ってことなのか。チンプンカンプンだ。早めに神様大図鑑を買ってこないと。 「そうだよ、沙耶。もともと筒姫の仕事は、その名前が示すとおり筒に入れた水を炎帝に捧げることで暑さを抑えることなんだ。筒姫の持つ筒の水は神の水だから、いつでも冷たくて、体の中から冷やしてくれるんだ」 「えっ、私がさっきまで飲んでたお水の事?」 「人間には少し強すぎるのかもしれない。何せ、神用の水だからね」 「じゃあ、この腹痛はその影響なのか」 「そんな事とはつゆ知らず、お水を勧めてしまい本当に申し訳ありません」  筒姫が土下座せんばかりの勢いで頭を下げてきた。 「ちょっと、筒姫……様、神様が土下座なんてしないでくださいよ」 「ねえねえ、沙耶。僕も神様だけれど、しょっちゅう沙耶に土下座させられてんだけど」 「あんたが悪いからでしょうが。それに、筒姫様は四季の神様、あんたはこの家だけの神様。神様レベルが違いすぎるでしょうが。大富豪で言ったらあんたが四で、筒姫様はAよ」 「え、四。四なんてほとんど役に立たないカードじゃん」 「セクハラエロ神にはピッタリのカードでしょうが」  筒姫が何か言いたそうにオロオロしている。声を掛けようかと思ったその瞬間、我が家の気温が一気に十度位上昇したような気がした。 「ちゅちゅ〜」
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