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「わかってます。自分が怪しいことくらい。でも・・・、御願いします。私をはたらかせてください。」
ジッと見つめた。
「目的は?」
「はい?」
「目的は何?」
刀があたっていた。首をひんやりとした。
「生きて、私が世に必要とされる日を待ち、死ぬときは誰かを動かせる、そう思ったとき。そう決めているからです。」
入江さんの目を見つめ返した。
答えになっていないことくらい、わかってる。
でも・・・これを突破しなきゃ、私の明日はない。
私の薙刀の師匠が言っていたことだった。
あれは、私のお母さんがいなくなったとき。
橋の欄干から飛び降りようとしていた。
将来も真っ暗で、希望も見いだせない。
そんな世界に終止符を打ちたくて。
乗り出した私の頬を張り倒したのは師匠だった。
『いい?いつかあなたのような子が必要とされる日まで、待って。死ぬと決めたときにはね、誰かを動かせる。そんな確信がなきゃだめ。』
息を呑む音がした。
「いいよ。おいてあげる。いいよね、晋作。」
「フッ。良いだろう。」
カチャンっと鞘にしまう音がした。
途端、気が抜けてヘナヘナと布団の上に正座を崩して座り込んでしまう。
・・・焦った・・・。
下手したら今頃胴体と首が離れてるとこだった・・・。
「だ、大丈夫?」
「大丈夫?じゃねェだろ。今の今まで脅してたのは誰だよ。」
晋作の正確なツッコミに入江さんはキョトンとした。
「晋作のそういうこと。」
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