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序章
花弁が舞い、水面に落ちる。
花筏はゆらり、ゆらりと揺れて水面を泳ぐ。
月光は抜き身の刀身を妖しく照らし、人影を妖艶に見せた。
水面に映る月光は揺らめく。
腰の抜けた人影は、右手を上げながら断末魔をあげた。
辺りは紅色に染まり、水面を紅く染めた。
返り血を浴びた人影は抜き身の刀を一振すると、カシャン、と鞘に仕舞う。
人影は絶命した屍の前に傅く。
そして、手をそっと合わせた。
「さようなら。」
人影、もとい武士の瞳はもう屍を見ていない。
屍を通して何かを見ているようだった。
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