一章

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大体、場所はわかる。 その場に着くまで無言だった。 『ねえ、さっきからソイツに触るなって言ってんじゃん。聞こえてないの? アンタら頭も悪けりゃ耳も悪いんだね』 殴る音と蹴る音が聞こえて来る。 「真咲?」 『……もーすぐ、アンタら殺られちゃうのにね。怒り狂った兄と彼を愛して止まない人が殺しに来るから』 「真咲!」 『……早く僕を解放してよ。おにーちゃん』 問題は解放したあと、どう殺るか。 仮に、行き着いたとして逆に向こうから逆襲されないとも言いがたい。 再度捕えられたら、動くなと言われりゃ終いだな。 「…………まだ血迷ってるの? 僕はアレを早く取り戻すんだ!」 「落ち着け。お前が暴走したら、元も子もない。迂闊(うかつ)には近寄れない。見張りが必ずいる。お前そこで暴れて来い」 「真咲は!!」 「安心しな。俺が連れて帰ってやるよ」 コレで木崎が納得するとは、俺は思わないが。 「…………」 木崎は俺を睨みつけたあと、渋々了承した。 弟に溺愛してる彼が了承したことに、戸惑いが隠せない。 コイツが真咲を手放すなんてしないはずだろう。 「アイツだけは先に解放してやるから、そのあとで思いっきり殺れ」 「僕に命令しないで!」 「健在じゃねえか。お前の威勢は」 「うるさいな」
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