二章

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この世界に入って、どれくらいだろうか。 気が狂いそうになる。もう狂ってるか。 至福の時間? タバコを吸いながら一人でいるとき。 誰にも干渉されずに、過ごせる唯一の時間だ。 壁に寄りかかり煙を吐いた。 生憎、この組織で吸うのはきっと俺くらいだろうな。 「ん?」 顔を上に向けると誰かが覗き込んでる。 不鮮明なガラスだからか、姿が見えねぇ。 灰皿にタバコを押し込むと、喫煙所を出た。 「…………和紗」 「やっぱここにいた」 「…………何だ」 「ごめんね、先生」 「…………何で謝る」 謝られるようなことされた覚えない。 「負傷してたでしょ。僕を逃がしたとき」 コイツ、まさかな? 否定だ。 「嘘! 平然としてたけど、絶対」 まっすぐ俺を見てる目は心配というか悲しげな目だ。 「…………それで、負傷する毎に自分を責めるつもりか? 俺が負傷したのは、自分のせいでって?」 「先生、僕は!」 「…………お前が謝る理由はない。俺一人で何人を相手にすると思う。殺し屋だぞ。あんなの負傷でも何でもない。お前が気にする必要もないんだよ」
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