ホラー小説のネタ探し

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     私の趣味は小説執筆。職業作家ではなく、あくまでも趣味として書いている素人作家に過ぎないので、作品発表の舞台は(もっぱ)ら小説投稿サイトだった。  残念ながら「だった」と過去形になってしまうのは、最後に投稿したのが3年前。それ以来、新しい作品の投稿が出来ていないからなのだが……。  大学時代の友人である田中が引っ越しを検討しており、一日かけて色々と物件を見て回るという。いわゆる内見というやつだ。  これは小説のネタ探しになるかもしれない、と思った私は、友人に同行することにした。住宅の内見といえば、ホラーの定番みたいな気がしたからだ。  例えば、天井の隅にいわくありげな、人の形にもみえるようなシミがあるとか。備え付けの家具の後ろの隙間を覗いてみたり、不動産屋が敢えて開けなかった押し入れをこっそり開けてみたりすると、そこにはお(ふだ)が貼ってあるとか。  ショートフィルムのホラー映画や短編のホラー小説で、そういうシチュエーションは何度も見たり読んだりした覚えがある。でも現実で同じ状況に立ち会った機会はないので、これは絶好のチャンス。ここで得たネタを元にして、新しくホラー小説を書いてみたい。  そんな思惑で、不動産屋が田中を乗せた車に、私も一緒に乗り込んで……。    
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