プロローグ

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プロローグ

今から約十年前_。 屋上へと続く階段は、山積みになった老朽化して 色褪せた机と椅子で封鎖されている。アルミ製の扉は黄色い鎖で閉ざされ、ラミネートされた 貼り紙にはゴシック体で「屋上立ち入り禁止」と 印字されている。 そこまでするには、込み入った理由がある。 この高校は元々は防空壕で、戦争で亡くなった人が今でも屋上を彷徨っているからだとか夜中に 校内を見回っていた男性教師が屋上から誤って 転落死した等、不謹慎な噂が絶えないからだ。 噂は噂なのに。皆、真に受けてるのかな。 希海がそう思うのも、無理は無い。彼女が昼休みにここを利用し始めて一年近く経つが、不思議と人の姿を見かけないのだ。いつも一緒に居る クラス公認のカップルでさえ、中庭や食堂を選ぶくらいである。
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