プロローグ

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希海はいつもの様に階段の中程に腰掛けると、 ランチョンマットに包まれた弁当を広げた。 持って来た文庫本を片手に箸を口に運んでいると 階段下から「あっ」と声がした。 「みーちゃん、またこんな所に居る。」 希海をみーちゃんとあだ名して呼ぶのは、 この世に一人だけ。同じクラスの葉山さんで ある。葉山さんは希海の隣に座ると、本の表紙 を覗き込んで言った。 「また、白鳥先生?本当好きだよね。」 「うん、一番好き。」 最初は話し掛けられても無視していたが、毎日 根気強く接してくれる彼女の押しが強く次第に 心を開いていった。 白鳥先生とは、希海の愛読書である作家の 「白鳥弥恵」の愛称。二年前に現役高校生でプロ デビューした新進気鋭の若手作家。素性を一切 明かさず、表に出ない事からファンの間でもミステリアスな存在として知られている
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