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本編
あれから私は大人になり、会社員になった。憧れの上司だった男性と、愛でたく結婚し今は専業
主婦をしている。
これといってなりたい職業や叶えたい夢があった
訳では無い平凡な私にとって、順当な道を歩んで
いると言えるだろう。でも…
「遅い。」
希海は午後九時を過ぎている時計を見やり、食卓に並んだ夕飯を冷蔵庫にしまい始めた。入浴を済ませ、先に就寝すると浴室から聞こえるシャワーの音で目が覚める。いつの間にか夫が帰って来た
のだ。
でも時々、この道を踏み外したくなる。いつから
だろう、"雅人さん"の帰りが遅くなったの。
結婚して約二年。子供はおらず、すれ違いが多いので作る気も無い。ふいに襲って来る虚しさに
絶え切れず「社会との繋がりが欲しい」とパートの相談をした時は、後ろ向きな反応が返って来た。
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