非日常系OLのお花見と、浮いているオッサン

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 私は〝日常〟が大嫌いだ。  OLとして仕事をしているのだけど、何もいいことがない。  幸せになりたくて、いくら努力しても、ただひたすらに辛くなっていく。  セクハラされる職場も、愚痴しか言わない両親も、お金をもらうためだけの仕事も、何もかもが辛い。  そんな〝日常〟を忘れるためには〝非日常〟に身を置くのが一番だ。    私にとっての〝非日常〟とは、没入型のアトラクションに近い。   「ねー。あの人、さっきからナニしてるんだろ」    ふいに、周囲の声が聞こえた。  私のことを言っているのは、すぐに察せられた。 「ずっと浮き輪で浮かんでるだけだよね」 「独りなんてかわいそー」 「やめなよ。本当にかわいそーじゃん」 「あはは。そうだね!」  わざと聞こえるように言っているのかもしれない。  おっぱいもお尻もだらしなければ、口はそれ以上にだらしがない。 (けっ! こんなところでSNSのことしか考えてないヤツには言われたくない!)  さっきも話したけど、このサイトプールでのお花見は〝非日常〟体験だ。  それに対して、SNSは〝日常〟だ。  この〝非日常〟には似つかわしくない。  私はこの〝非日常〟を味わいに来たのだ。  そうだったのだけど――
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