非日常系OLのお花見と、浮いているオッサン

3/10

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「うーん、思った以上に何もない」  私は、桜を見ているのに飽きていた。  どこで見ても、桜は桜だ。  一目見た時の感動が通り過ぎてしまえば、興味がなくなってしまう。  そうなってしまえば、ただのナイトプールだ。  〝日常〟だ。 (何か面白いものはないかなぁ)  私は周囲を見渡した。  でも、あまり期待していなかった。  念のための最終確認程度のものだった。  それなのに、ソレ(・・)はいた。  キャピキャピと輝く女性達の中で、圧倒的な異物感を発しているソレ(・・)。  中年男性――オッサンだ。  白鳥を形どった浮き輪に乗って、プカプカ浮かんでいる。  しかも白鳥の首を挟むように股を開いていて、すごく気持ち悪い。  スネ毛も胸毛もボーボーで、ビール腹がポッコリと出ている。  まさに、だらしない中年男性そのものだ。  私の職場にだって、似たような雰囲気のセクハラ男がいる。  〝日常〟によくいる存在だ。  だけど、ナイトプールという不釣り合いな場所でプカプカ浮かんでいるだけで、異様な雰囲気を漂わせている。  この状況においては、このオッサンは〝非日常〟になりえている。  つまり、私の大好物だ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加