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「うーん、思った以上に何もない」
私は、桜を見ているのに飽きていた。
どこで見ても、桜は桜だ。
一目見た時の感動が通り過ぎてしまえば、興味がなくなってしまう。
そうなってしまえば、ただのナイトプールだ。
〝日常〟だ。
(何か面白いものはないかなぁ)
私は周囲を見渡した。
でも、あまり期待していなかった。
念のための最終確認程度のものだった。
それなのに、ソレはいた。
キャピキャピと輝く女性達の中で、圧倒的な異物感を発しているソレ。
中年男性――オッサンだ。
白鳥を形どった浮き輪に乗って、プカプカ浮かんでいる。
しかも白鳥の首を挟むように股を開いていて、すごく気持ち悪い。
スネ毛も胸毛もボーボーで、ビール腹がポッコリと出ている。
まさに、だらしない中年男性そのものだ。
私の職場にだって、似たような雰囲気のセクハラ男がいる。
〝日常〟によくいる存在だ。
だけど、ナイトプールという不釣り合いな場所でプカプカ浮かんでいるだけで、異様な雰囲気を漂わせている。
この状況においては、このオッサンは〝非日常〟になりえている。
つまり、私の大好物だ。
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