非日常系OLのお花見と、浮いているオッサン

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「あの、何をしているんですか?」  我慢することができず、私は声を掛けた。 「あー。珍しいですね。君のような子は、非常に珍しいです」  オッサンは私に目を向けてきた。  その瞬間、背筋が凍り付いた。  オッサンの瞳は、空洞のように(うつ)ろだったのだ。  見ているだけでも不安を掻き立てられる。  性的な危機とは違う。  もっと本能的なものだった。  この人は異常だ。化け物だ。  絶対に逃げ出した方がいい。  だけど、逃げ出したくない。  心の奥底から、そう思ってしまった。  ドクン ドクン ドクン  心臓が早鐘(はやがね)を打っているのは、恐怖心だけのせいじゃない。  私の心は浮足立っている。  内心、期待しているんだ。  このオッサンの〝非日常〟に。     「ほう。珍しいですね」  オッサンは顎をさすりながら、言った。   「ここで私に声を掛けてくる女性は、怒鳴ってくるか軽蔑するか、マイナスな感情しかぶつけてきません」  それはそうだろう。  そう思ったけど、口には出さなかった。 「しかし、あなたは僕に興味を持っている。とても不思議な女性ですね」  私は好奇心に突き動かされるまま、口を開く。 「あなたの方が不思議ですよ。普通、あなたのような人が一人で来る場所ではありませんから」  かなり失礼なことを言ったはずなのに、オッサンの表情はピクリとも動かなかった。 「ええ。そうですね。周囲の人に迷惑をかけていることは自覚してします」 「では、なんでここにいるんですか?」 「随分鋭い質問をしますね」
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