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『一番の〝日常〟は生きることです』
否定のしようがない。
〝日常〟とは生きることだ。
つまりは生きている限り、感じている〝非日常〟は嘘っぱちだ。
『よかったですね。あなたはこれから、最高の〝非日常〟に出会えます』
そうだ。
私は〝非日常〟に行けるんだ。
セクハラをしてくる上司も、お金をせびってくるだけの親も、セックスしか頭にない彼氏もいない。
本当にクソみたいな〝日常〟だ。
だけど、私は〝日常〟から逃げるわけじゃない。
ただ、あいつらより一歩先の〝非日常〟に行くだけだ。
……本当に、それでいいのかな?
まあいっか!
だって、こんなにも気持ちがいい。
解放感が突き抜けている。
一歩一歩進むのが、楽しみで仕方がない。
これが私が求めていたものだ。
なんで、最初からこれをしなかったんだろう。
いや、悔やむのなんてもったいない。
この最高の気分が陰ってしまう。
今はただゆだねよう。
それだけでいいんだから。
パシャ パシャ パシャパシャ
水をかき分けて。
顔が水に浸かって。
髪も全部、プールの中に入った。
それでも、まだまだ沈んでいく。
プールの水が目に染みるのに、目を閉じられない。
ふと、顔を見上げる。
水中から見える、霞んだ桜。
それを見た瞬間、涙がこぼれた。
ああ、美しいなぁ。
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