非日常系OLのお花見と、浮いているオッサン

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 夜の花見。  夜空と桜のコントラストが、とても鮮やかだ。  夜の暗さが、桜の上品で淡い美しさを引き立てている。  空を見上げれば、月がプカプカと浮かんでいる。  私も同様に、プカプカと浮かんでいる。  ただし『夜空に』ではなく『プールの水面に』だ。 「ねー。これエモくない?」 「ヤバ! インスタ映えじゃん!」 「だよね! 早速上げよ!」  周囲からは、若い女性のキャピキャピした声が聞こえてくる。  彼女たちは水着姿だ。  オシャレで、少しきわどい水着を着ている。  男性の目を気にしたオシャレではなく、自分を輝かせるためのオシャレなのだろう。  少し趣味の悪い色だ。  だけどこの空間には、もっと趣味が悪い色がある。  プールの色だ。  プールの中はエメラルドグリーンで光っており、プールサイドはショッキングピンクに照らされている。  ここは普通のプールではない。  ここは、ナイトプール(・・・・・・)だ。  私は今、ナイトプールでお花見をしている。  このナイトプールの周囲には、桜が植えられていて、お花見をすることができるのだ。   「これはいい〝非日常〟」  それが、私がここにいる理由だ。  夜。  お花見。  プール。  どれもありふれたものだ。  だけど、それらがお互いに魅力を引き出し合い、独特の妖艶さを生み出している。  これが〝非日常〟。
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