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私はまず、主上の祖母君であらせられる二位様に相談することにした。一介の女官が二位様に直々に相談を持ち込むなど、陸にいた時分には眉を顰められたかもしれない。しかし、私はいつでも二位様に話しかける口実を探している。
二位様は強く賢く美しい。私の憧れの女性だ。陸ではいつもその芯の強さ、そして厳しさの中に併せ持つ優しさに助けられた。波の下の都に来てからは、いつも穏やかな顔をなさっていて、それでいて新しいものへの興味を絶やされない。
波の下の都へ移り住んだ時、二位様はすでに六十におなりだった。周りを見ても、年寄りになるほど新しいことを耳に入れたがらないのに、二位様は水底に漂ってくる細々したものから時代とともに変わる文字をお覚えになったり、阿彌陀寺を訪れる人々の話から当世の世情をあれこれ推察なさっていたり、生来とても頭の良い方なのだと思う。生まれる時代さえ違えば、もっともっと幸せに生きてよかった方なのにと悔しく思うと同時に、この波の下の都で、人の世を未来永劫見守り続ける二位様のお側にいられることを幸せにも思う。
「お花見!なんて素敵なことを言い出すの、お前!」
私の話を聞いて、二位様は分かりやすく目を輝かせてくださった。陸では見たことのなかった、このぱっと周りを明るくするようなお顔が、恐れながら一番好きだ。
「すぐに阿彌陀寺に人を遣って、花の様子を調べさせましょう。まだ間に合うといいのだけれど......。」
二位様はその場で下人を呼んで阿彌陀寺に遣いをお出しになった。こういう行動が早くててきぱきしたところも、恐れながらたまらなく好き。
それから二位様と今後のことを話し合った。桜がまだ咲いていることが分かったら、二位様から花見のことをみなに話していただき、それから私が表立って手配を進める。桜がもう散ってしまっていたら、花見の話は来年まで私たちの胸の内にしまっておく。主上をぬか喜びさせてはお可哀そうだし、宴に加われなかった何百年が何百一年になったとて、大して変わりはしないだろう。
私は主上のためにどうか桜が咲いていますようにと真剣に祈りながら、来年の春まで二位様と二人きり、他の誰にも秘密で桜を待つという甘美な想像も止められなかった。
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