64人が本棚に入れています
本棚に追加
以前は確かに、まいさんに嫌われたって構わない、と思っていた。
───正確にいえば「嫌われる覚悟で」いろんな行動を起こしていた。
だって、「姉弟なら」たいがいのことは、次の日には「ゆるされる」ような気がしていたから。
血のつながりがあるということは、僕にとって、
「相手に対しての許容範囲が無条件に広がる」
というもので。
だけど、いまの僕たちは、まいさんの言葉を借りれば、
「ただの年の離れた男と女」
なわけだから。
僕は、あの日からずっと、
「まいさんに嫌われないような」
ギリギリのラインを慎重に守りながら、まいさんに接していた。
けれども。
「────は?」
まいさんは思いきり顔をしかめて、僕を見上げてきた。
その表情は、もう何度も見せてもらってきたものだけど、やっぱり、とてつもなく可愛いくて。
一瞬、ぎゅっと抱きしめたい衝動にかられたけど、あまりにも脈絡がなさすぎることに気づいて、僕は必死で、そんな自分を抑えこんだ。
「バッカじゃないの、あんた」
直後、まいさんの口からでてきたのは、そんな言葉だった。
僕は、まいさんの僕に対する「バカ」という呼びかけが、好きだった。
そう言われるたびに「愛してる」って、遠回しに言われてる気がしたから。
透さんは、
「お前それ……幻聴だろ。つか、脳の構造ダイジョブかぁ? いったい、どんな翻訳機能がついてんだよ?」
なんて、あきれていたけど。
最初のコメントを投稿しよう!