3.まいさんとの『秘めごと』

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「いやだなぁ、まいさん。終わらせてくれないのは、まいさんのほうなのに? それに……」 言いながら、僕を求めるように突き出された小さなふっくらとした唇に、指を()わせた。 「その瞳も、この唇も……僕より、まいさんのほうがいやらしいって、どうして解らないのかなぁ……?」 頬を傾けて顔を近づけると、まいさんが観念したように瞳を伏せる。 困ったような恥ずかしそうな表情が、僕の身内の衝動を(あお)る。 ……ほら。やっぱり、まいさんのほうがいやらしいじゃないか。 やわらかな唇を感じながら、流し台にまいさんを押しつけるように、身体を密着させる。 蛇口から流れたままの水を止めてさらに奥深くまで侵入して、まいさんを捕えようとした時。 固定電話が、鳴った。 着信メロディからして、お父さんからなのは、すぐに解った。 まいさんの小さな手が、僕の胸を押しやろうとする。 強引に続行するのは簡単だったけど、相手がお父さんじゃ……仕方ないかな? 「───……もしもし、父さん? どうしたの?」 僕の束縛から逃れたまいさんは赤い顔のまま受話器を取り上げ、かすれた声で電話に出る。 「え? ……あぁ、ご飯食べてて……───大地? もうとっくに帰って来て、一緒に食べてるけど。 ───ああ、そう、分かった。……うん。じゃあね、お疲れさま」 受話器を置いたまいさんが、僕を振り返った。
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