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この気持ちをどうやって、まいさんに伝えたらいいのか……どうやったら、とりこぼさずに全部、まいさんに伝えられるのか。毎日、考えているんだよ?」
眉をぎゅっと寄せたまま、涙目でまいさんが僕を見下ろした。
不安と自己嫌悪が交錯した、痛痛しいくらいに美しい表情が、そこにはあって。
僕は思わず、自分の耳を覆ったままでいる小さな手に、指を伸ばした。
初めて会った日に、僕の手を握ってくれた、その手のひらを引き寄せる。
やわらかく温かい手は、変わらないのに……僕の手だけが、あの日よりずっと大きくなっている。
───あなたに想いを重ねた分だけ、確実に。
引き寄せた手のひらを、今度は僕が、両手で包みこむ。
僕の気持ちも……このぬくもりと同じように、あなたに伝わるかな?
「だから、ね、顔を上げて。僕を見て。
あなたの瞳に映る僕だけが……僕の真実なんだ。
あなただけしか見えない……他の人からしたら、可哀想なくらい、愚かで滑稽な生き物で。
だけど、僕自身からすれば、このうえない幸せな日々を生きている、あなたに恋い焦がれる、ただのひとりの男なんだよ」
まいさんは、泣き笑いを浮かべた。小さく、息をつく。
「……よくもまぁ、それだけ口からペラペラと言葉がでてくるわね?」
いつもの憎まれ口に、僕は、ふふっと笑ってみせる。
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