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まいさんの「バカ」には、いろんな愛情のカタチが含まれているんだってこと。
その表情が、そのしぐさが、その抑揚が、すべてを如実に語ってくれてるんだってこと。
いくら説明しても、透さんには解ってもらえないようだった。
「迷惑なら迷惑だって、言ってるわよ、とっくに。
あんたに対して、なんでそんなつまんない遠慮しなきゃなんないのよ、私が」
まいさんの答えはいつも明快で、僕を安心させる。
血のつながりがなくても、こんなにも僕という存在を受け入れていると、証明してくれるんだ。
「ってかね~」
意識の半分以上が『幸せ実感中』だったせいで、まいさんのしかめっ面が微妙に変化して、ふてくされたように視線をそらしたのに、ワンテンポずれて、気づく。
「……必要ないって言われても来るからね? とか、最初に言いやがったのは、あんたじゃないのよ。何よ、いまさら。
あんたが……こうやって一緒に帰ってくれてるから、こんなに遅い時間まで、安心して仕事こなせるんじゃないのよ、ばか」
「…………うん」
僕は、まいさんに笑ってみせた。
……ああ、どうしよう? まいさん可愛いすぎる……。
とりあえず、今日のところは自分の欲望に忠実に、この可愛いらしい女性を、腕のなかに閉じこめておく。
……うん、大丈夫。
きっといまの僕の行動は、まいさんの「許容範囲」のはずだから───。
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