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「あーっ! 進藤くん、待って待って~。
ね、終業式の日に、クラスの何人かでクリスマス会やる予定なんだけど、来ない?」
「───悪いけど、本当に急いでるんだ。あと、そういう皆で集まって何かするとか、興味ないから」
追いかけて来た彼女に、はっきりと断ると、踊り場に残されたもう一人の女子が、大きな声で言った。
「ほらな~、進藤は付き合い悪いの分かってるんだから、誘うだけ無駄だって」
「でもぉ……」
なおも言い募ろうとする彼女を尻目に、僕は階段を降りて行く。
……バスの時間ぎりぎりなのに、無駄な時間とられちゃったな、と、思いながら。
*****
玄関の扉を開けると、良い匂いがした。
……これは、オムレツかな?
ダイニングキッチンに直行して声をかける。
「ただいま」
フライパンから、黄色い楕円形の物をお皿にすべらせているまいさんが、僕に向かって微笑む。
「お帰り。ご飯すぐに食べる?」
「ううん、先に、まいさんが食べたい」
「────アホなこと言ってないで、うがい手洗いしてきなっ」
「……はぁい」
半分以上は本気の僕の冗談は、たいがい低い怒声ではねつけられる。
でも、返される言葉はきつくても僕をにらむまいさんの頬は、照れを含んで、わずかに赤い。
そんなまいさんの反応を見たくて、わざと怒らせるようなこと言ったりする僕を、まいさんは気づいているのかなぁ?
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