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9月
高校2年の9月、転校生が来た。
「藤谷小弛です。よろしく」
フワフワした明るい色の髪の毛と人懐っこい笑顔に教室内が騒めく。
「席は神崎の隣な。神崎ー」
先生に呼ばれ、小さく手を挙げた。
藤谷君は「あっ」と何か言いかけて足早に近づいて来た。
藤谷君が席に座るかどうかのタイミングで、前の席の悪意ある顔が振り返った。
「あたし麗奈。よろしくね」
「おす。よろしく」
「隣、たまにシカトしちゃうけど勘弁してね。耳がないからさ」
身体中の血がカッと上った。顔を上げることができなかった。
会話が聞こえていた周りの女子がクスクス笑っていた。
"元親友"も、少し離れた席からきっと私を見ているだろう。
「なぁ」
ハッと顔を上げると藤谷君の笑顔があった。
「この距離なら大丈夫だな。よろしく」
「よ、よろしく」
彼につられて少し笑っている自分に驚いた。
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