6月

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ママは小さい頃からいつも耳の部分が見えないように髪を結ってくれた。毎日学校から帰るたび「学校どうだった?」と一日も欠かさず聞いてくれる。 そんなママを悲しませたくはない。 明日から、きっと私の毎日は変わる…。 でも大丈夫、頑張れる。学校生活には終わりがあるんだから…。 大丈夫、頑張れる。 学校から数メートル走った所で、少し心を落ち着かせようと思い土手に腰を下ろした。数分おきに心が騒めき、言葉にできない不安が押し寄せる。 大丈夫、頑張れる…そう思うのに。思いたいのに。弱い自分が心を乱す。 大丈夫?頑張れる? 転校できたらいいのに。時間が戻ったらいいのに。みんな消えてしまえばいいのに。 私なんか……。 目には何も映っていなかった。絶望に手招きをされて、心が死に向かっていくのを感じていた。 6月の風が不意に運んできた優しい歌声が、冷えていく胸の奥にそっと救いの火を灯した。 "by my side いつも どんな時も" ママの顔が浮かんだ。 その時強い風が吹いた。 ほどいていた髪が舞い上がる。 初めての開放感に、笑えてる自分がいた。 …うん、大丈夫。 心は温かく満たされていた。 みんなに奇形(ひみつ)を知られ、親友を失った日。 生まれて初めて消えてしまいたいと思った日。 そして、ありのままの自分に向き合えた日…。 "by my side いつも どんな時も" 早くママの顔を見たい… 私は勢いよく立ち上がって走り出した。
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