9月

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9月

 無邪気に机をガーン‼︎と寄せて 「てかさ、教科書見して。まだなくてさ」  藤谷君が顔を寄せてきた。 「あ、うん…いいよ」  机の中から出した教科書を開き愕然とする。 …油断していた。  夏休み前うっかり入れっぱなしにした時に大丈夫だったから、もう無いかと思っていたのに…。  フリマアプリで買い直した教科書の中がペンやカッターでズタズタにされていた。 「ご、ごめん。ちょっと私のはあれだから。右隣に見せてもらって」 「え、何で…落書きでもしてんの?」  藤谷君が私の手から教科書をヒョイと引き抜いた。 「…んだよ。コレ」  ボソッと聞こえた様な気がした。  後はパラパラとページをめくる音が微かに聞こえた。
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