9月

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「ちょっ、教科書貸して。あんたは隣に見してもらってよ」  右隣のギャルから一方的に教科書を借りて、左隣とくっつけた机の真ん中に置いた。  俯いていた神崎友音がビックリして顔を上げた。  泣いてはいなかった。  いっそ泣いていてくれた方が良かった…そう思うくらいの表情の無さに、胸が痛くなった。 「借りた」  気の利いた言葉が浮かばなかった。  でも、笑ったんだ。 「ありがとう」  って、笑ったんだ。 「先生とか、知ってんのかよ?ちゃんと…」 「大丈夫。大丈夫だよ」  俺の言葉を遮って、神崎友音はきっぱりと言った。  さっきとは違って、力に満ちた目をしていた。  こいつ、強いな。そう思った。
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