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「ねえ、ママ。(ゆずる)叔父さんにもらったあのペン、一本お友達にあげてもいい……?」  母の弟である叔父の譲に、海外出張の土産だと渡された色違いの二本のボールペン。  シルバーのボディにそれぞれブルーとピンクのストライプの、大人びたスタイリッシュな文房具だ。  外国の有名なメーカーの品で、子どもが持つものではなさそうなのもわかっていた。  宏基が格好いいと言ってくれた、あのペン。 「もちろんよ。……陽奈、先生には転校の手続きとかあるから明日ママから連絡するけど、お友達には自分で話す?」 「うん」  こんなものを渡したら困らせるだろうか。  けれどせめて何かの繫がりが欲しかった。陽奈の気持ちの上だけでいい。……すぐに捨てられてしまっても構わない。  ──だって引っ越したらもう会えないんだから。  今までに転校していった友人を見送ったことはある。  しかし全員が首都圏、それも都内や神奈川、千葉だったため、休日に東京(こちら)に遊びに来た彼女たちとは約束して普通に会っていた。  しかし名古屋ではそうは行かない。  遠い街。新幹線で移動するような、旅行で訪ねるような、未知の土地。
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