第4章「母、襲来。」

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第4章「母、襲来。」

 朝目を覚ますと、家の中がやけに静かだった。朝のニュース番組の声が聞こえない。その分、窓の外の鳥のさえずりとか、車の行き交う音、小学生のさざめきがよく聞こえる。いつもなら一階から香ってくるみそ汁の匂いも、今日はしない。 「ばあちゃん?」  そこそこ大きめの声で呼びかけたが、いつもの鷹揚な「はぁい」は返ってこない。  まさか、まさかね、と思いながら、厚手のカーディガンを羽織り、スマホを握りしめて階下へ降り、もう一度 「ばあちゃん!」  と強めに呼び掛ける。  俺の声が消えると、相変わらず家の中は無音になる、いや、時計の音、冷蔵庫の音、窓の外の喧騒は聞こえ、人の声だけ、そして包丁のトントンという音だけがない。  ごみ捨てに行ってるだけだ、きっとそうだと思いながら、廊下を足早に歩く。気が付いたら眉間に皺が寄っていた。リビングの扉を開ける。  電話台の前にうずくまるばあちゃんが居た。 「ばあちゃん!」  駆け寄って肩に触れると、微かに震え、しっかりと熱を持っていて、身体中の力が抜けた。でも、もしかして心臓でも苦しくなって倒れ込んでいるのだとしたら、と、 「ばあちゃん、大丈夫?身体どうかした?」  と問いかけた。  ばあちゃんは首を横に振って絞り出した。 「アケミさん……亡くなったって。急に。昨夜倒れて……」  苺のタルトが大好きだった、快活な笑顔が魅力的なアケミさん。みんなのムードメーカーだった。ばあちゃんも特に仲良くしていたし、何よりまだ六十代。お孫さんがいるから立場上おばあちゃんだけど、おばあちゃんと呼ぶのは失礼なくらい、若々しい人だった。 「ごめんね、心配させて、もう大丈夫よ」 「全然大丈夫じゃなさそうだよ、座ってて、お茶淹れるから」  朝ごはんにおにぎりでも作ろうか、と言ったけど、食欲がないからと断られた。 「とりあえず、お店に臨時休業の貼り紙してくる」  どうせお友達は皆来ないだろうけれど、念のため。と思ったが、憔悴しきったばあちゃんを一人にしていいのだろうか。  迷った末、スマホをポケットから取り出しメッセージを打った。
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