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二週間後、たっちゃんさんの店の定休日に、国立にある毛糸屋に二人で出かけた。そこは、俺が買ってもらったベストのブランドJAMIESON'Sの作っている、フェアアイルに最適な毛糸を全色取り揃えている。入り口正面の壁の端から端まで、全てJAMIESON'Sの毛糸が埋め尽くす。
たっちゃんさんが
「うわ、これ壮観…」
と呟いた。俺には分からないけど、きっと「色の洪水」というやつなのだろう。
事前に俺がざっくり決めたデザインは、ベースカラーは濃紺で、柄は明るめの緑を基調にしつつ、赤と黄色をアクセントに点々と配置したい、というものだった。せっかく目を借りられるのなら、特に見分けのつかない赤と緑をしっかり使ってみたいと思った。
「緑色と赤は、黄色と青どっちに寄せたいの?」
「えっと、緑は青寄りだけど深すぎない、彩度が高い緑で、赤は黄色寄りが良いかな」
「おっけ、じゃあこのへんかなぁ。この緑は、小学校で使うクレヨンに入ってるような、超オーソドックスな緑。赤は、けっこう黄み強めの、朱赤っていうか、日本的な赤みたいな」
はっきりした色味を使いつつ、懐かしさも出したかったから、その印象は俺のイメージに合っている、と思った。
「あ、それと模様のベースにグレー欲しいです」
グレーは分かるから、ここからここまでグレーだよ、ということだけ教えてもらって、ちょっと青みよりの薄めのグレーの毛糸を、自分で手に取った。
「これ、そこのテーブルに並べて、たっちゃんさん的にバランスどう思うか教えて下さい」
並んだ毛糸玉達を見て、たっちゃんさんはうーんと考え込む。
「赤がそんなに面積広くなくて、ほんとにポチっと差し色程度ならまとまると思う」
拡大コピーして持ってきた編み図を広げる。
「じゃ、この使う量が少ない色Cを赤にします。で、地の色の次に量が多いBをグレーに」
そうやって色の割り振りをし、必要な量を確認しながら買った。
「ありがとうございました、編むの、楽しみです」
「いいえー。俺も楽しかったよ。デザイナーみたいで。ていうかさぁ、敬語じゃなくていいよ?俺達バディじゃん!」
バディ。そうなんだろうか。俺が一方的に世話になる感じなんだけど。まあでも、敬語じゃなくていいよは採用しよう、と思った。
「休みの日に悪ぃな。まぁよろしく頼むわ」
「高低差すごっ。全然敬わないじゃん!」
たっちゃんさんが爆笑して、俺もニヤっと笑った。
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