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突然――本当に突然、俺とユリシーズの死角に何かの気配が現れる。
と同時に、「そのことなんだけど」と言う声がして……。
俺とユリシーズがバッと振り向くと、そこにいたのはやはり、ロイドだった。
なお、ロイドの左手にはいくつものシュークリームが乗った皿があり……。
その姿に、俺は突っ込まざるを得ない。
「――おっ、お前! 今どこから出てきた!? いつからそこにいた!? ってか、その皿どこから持ってきたんだよ……!? お前、マリアから謹慎くらってたはずだろ!?」
――そう。
ロイドはキッチンからお菓子を盗んでいたことがマリアにバレて、三日間の謹慎を命じられたのだ。
にも関わらず、ロイドは俺たちの前にいる。
「お前、謹慎の意味わかってないの?」
唖然とする俺に、平然と答えるロイド。
「え~? だって、すっごくいい匂いがしたから」――と。
その答えに、俺は脱力した。
(突っ込むだけ無駄だ。つーか、突っ込んだら負け……)
そう思ったのは俺だけではないようで、ユリシーズも深い溜め息をついている。
ロイドは、シュークリームをもぐもぐと頬張りながら続けた。
「アレクの身体のこと、誰にも内緒だからね?」と。
「――あ? ああ、当然だろ。俺だってリリアーナに変な心配かけたくないし。お前も、魔法を使ったことがマリアに知られたらマズいんだろ。わかってるよ」
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