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私はおじいさんをベッドに座らせた。
「おじいさん、何か飲み物でも飲む?冷蔵庫とか…」と、辺りを見回す。
白い箱に前開きの扉がついていたので、多分これが冷蔵庫だと思い「開けますねー」と言いながら扉を開けた。
「……え、嘘。空っぽ…」
確かに中は冷蔵庫のように棚で仕切られていたが、冷気も感じないただの棚だった。
「そうじゃ…なぁんにも無い。食料も、魔力も、底を尽きたんじゃ…」
え?今、何て?おじいさん、痛い人?
おじいさんの発言が気になりながらも、水道の蛇口を見つけたのでコップに水を入れて渡す。しかし「水なら充分飲んだ。いや、もう水しか飲んどらん……」と受け取りを拒否する。
「そしてワシの寿命が尽きて、ジ・エンドなんじゃ……」
おじいさんは両手を上げて天を仰ぐ。
「いやいや……おじいさん……」ふざけている?と言いかけてやめた。
私は内心ため息をつきながら「……これ、食べる?」と、期間限定販売の『バリ旨ダブルナッツドーナツ』が入った紙袋を手渡す。
おじいさんは中身を確認すると、すぐにかぶりついた。
「おぉぉおっ!美味い、美味い!これは良い!魔力がみなぎってきたわい!」
―――それは良かった。
でもよく考えたら『バリ旨ダブルナッツドーナツ』だけが手持ちの食料だったんだよね。もしこのまま帰れそうになかったら、餓死決定だ。
私は思わず本当のため息をついてしまった。
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