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「いるのじゃないの」彼は答えたのだ。
「そうか」真知子とはすっかり打ち解けていた。
「まさか」
「面白いな、と思って」
「それで?」
「彼氏になってもらおうかなあと思って」
「なぬ?」小川は心臓を殴られたような気がした。
「仕方ないな」真知子は言った。
「そうだったのか」
「何どうしたの?」
「いや何でもない」小川は黙ったのだ。
しばらく小川は真知子と話さない日々が続いた。それほどの衝撃であった。
春になった。国立高校に進学した教え子は笑顔で朝登校して行く。小川は大学三回生になった。
真知子は広瀬と仲がよくなったらしい。小川はもともと異性にもてる方ではなかったので舞い上がってしまい、せっかくの機会をだめにしてしまった。
「何とかなるだろう」と彼は真知子との恋は諦めた。しばらく恋からは遠ざかることになりそうだ。困ったことだった。
彼は一人で花見をしていた。桜の花が彼の心を癒してくれたのであった。
夜アパートの窓から夜空を見上げて彼はやがて眠りに落ちた。
その日、真知子は広瀬とデートしたらしかったのだ。
(了)
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